(その9)
フエの遺跡群は北京の故宮や十三陵のような壮大さはない。故宮を造営するには国力が小さすぎた。また、日本建築の歴史がそうであったほどには「国風化」の現象が著しいわけでもない。それには中国との距離が近すぎ、また争乱も絶えることがなかったといえる。フエの遺跡群は自己主張をするというよりはベトナムの風土にしっくりと溶け込んでいる。フエをどのように見るのかは人それぞれであるが、ユネスコのA.M.マボウ氏の語った「賞賛すべき建築上のポエム」というのが一番的確な表現かもしれない。熱帯雨林の中に眠るその詩の如き都市が経てきた歴史を思いながら歩くとき、やはり深い感慨を覚えずにはいられないのである。
参考文献・図版出典
欽定『大南會典事例』
『大南一統志』
『安南通史』(岩村成充著 冨山房 1941年)
『NHK 美の回廊をゆく 東南アジア至宝の旅 3』(NHK取材班他 日本放送出版協会 1991年)
『救おう!ベトナム・フエの文化遺産』(ユネスコ・アジア文化センター 1994年)
"KIEN TRUC CO DO HUE" (Phan Thuan An, Hue - 1995)
写真提供
フエ遺跡保存センター
ハノイ社会科学研究院
←その8(皇帝陵2) トップへ↑ |